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アルツハイマー型認知症とうつ病の神経心理学的所見について

慶応三村先生のご講演より。

患者さんにも役立つ知識としてメモしておきたい。

 

認知症(特にアルツハイマー型)と、

老年期うつ病はしばしば鑑別が必要だ。 

いわゆる「pseudo dementia」(仮性認知症)

として知られている。

 

両者とも同じように「記憶力」が落ちる

わけだが、その鑑別の要点として

 

・認知症では記憶痕跡そのものが失われている。

・うつ病では記憶痕跡は残ってる。

それを取り出すことができない。

「思い出し方の忘却」とも言われる。

 

また、記憶力検査の質問に対しても

・認知症では、言い訳をしたり、

はぐらかしたりする。 自己予測>検査成績

 

・うつ病では、こんなこともできないと、嘆く。  

検査成績>自己予測

 

そして、よく検査される視覚構成機能に関しては、

うつ病で障害されることはほとんどない。

 

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認知症の患者さんを診察しているときに 

どこかボーッとしていたり、表情が乏しいと

感じることが多い。記憶力の低下だけではなく、

注意力(強度や選択性)の低下も顕著となる

ことを意識しておきたい。

 

また、ワーキングメモリー

(記憶を一時的に保持しておく能力)

について、「こころの黒板」という

例えがわかりやすかった。

 

2022年01月16日
本のご紹介17〜感想編〜

~ 精神の自由 ~

 

「人間の魂は結局、環境によっていやおうなく

規定されるのか ~略~ 人間は体質や性質や

社会的状況がおりなす偶然の産物以外のなにもの

でもないのか ~略~ 人間はひとりひとり、

このような状況にあってもなお、収容所に

入れられた自分がどのような精神的存在に

なるかについて、なんらかの決断を下せるのだ。」

 

「生きるとはつまり、生きることの問いに

正しく答える義務、生きることが各人に

課す課題を果たす義務、時々刻々の要請を

充たす義務を引き受けることにほかならない」

 

生と死の狭間、極限の状況を体験したからこその

著者の重い言葉。

 

私にはとてもそこまでの心理に達することは

できない。

 

それでも、日々の生活の中で厳しい状況に

置かれた時に、少しでも意識してみたい。

 

2022年01月15日
ADHDとdrowsiness

ADHDの方の治療を続けていくと、

「幼い頃から日中ずっと眠かったのが改善された」

と聞くことが増えてきました。

 

調べてみると、ADHDの37%にEDS(Excessive

Daytime Sleepiness)、EDSの18%にADHDを

認める(Oosterlee,2006)という研究がありました。

 

興味深いですね。

 

 

 

 

2022年01月14日
「病後の生活史」を作る

先日、笠原先生のご講演を拝聴した。

その中で、”病後の生活史を作るお手伝いをする”

という言葉が非常に印象に残った。

 

私なりに解釈してみた。

 

病気を「治す」とはどういうことなのか。

 

もちろん、完全に症状が「無くなる」

ことが理想ではあるが。

 

現実では、患者さんがその症状を抱えながら

上手に生活して行かざるを得ないことも多い。

 

症状を「無くす」ことに医師も患者も一生懸命

になるあまり、”病後の生活史”に目を向ける

ことを忘れていないか。

 

病気を受け入れた上で、

これからの生活に目を向け、共に考え、

充実させていく。そうすることによって、

生活の中に占める「病気」の割合が少しずつ

小さくなり、「今」がだんだんと「病後」

になっていく。

 

そんな治療を意識することも大切なのかなと考えた。

 

九大病院、精神科医1年目の時、患者さんを「治そう」

とするあまり、「先生は万能感が強すぎる」

と指導されたことを思い出した。

 

 

 

 

 

2022年01月13日
本のご紹介17

 読み始めた

2022年01月07日
本のご紹介16

 

「私達は経験によって決定されるのではなく、

経験に与えた意味によって自分を決めるのである」

 

「過去の経験がこの人のライフスタイルを

決定するのではなく、この人のライフスタイル

に合致した回想を選び出している」

 

好きな考え方です。

 

「民主主義は手続でしかないのであって、

それ自体として意味があるわけではないのです。

したがって皆が誤るということはあり得ます。

共通感覚(コモンセンス)が全面的に誤ってる

ということはあり得ます。私たちは民主主義が

自殺することないよう、絶えず気を配って

なければなりません。そのために、誰かに

強制されたり、あるいは、与えられたものを

正しいものとして無条件に受け入れるということ

なく、自分で考えて正しい判断を

していかなければなりません」

 

今の世の中、気をつけないといけませんね。

 

 

 

2022年01月07日
F君の話

今ではすっかりと釣り人として世間に認知?

された私ですが、小学校〜大学、一部社会人までは

ずっとバスケットマンをしていました。

 

アメリカでバスケをはじめ、スラムダンク全盛期の

日本に帰国。それはそれは調子に乗っておりました。

 

しかし、その天狗の鼻も高校入学時にポッキリと

折られてしまいます。 各中学のキャプテンや

エース級がこぞって入部。バスケットマンとして

特に背が高いわけでも、ジャンプ力があるわけでも

なく、「その他大勢」の1人に過ぎなかったため、

監督の目にも止まらず、全く相手にされない状況が

続いていました。

 

そんな私は毎日のように同級生や先輩に

「どうやったら上手くなれるか?」ということを

聞いて回っていました。親身になって答えてくれる

人も多かったと思いますが、何か「裏技」的なもの

を求めていた私にはどんな親切な助言もピンと来ず、

「やめてしまおうか」などと考えながらも意味の

ないダブルクラッチなんぞを毎日練習していました。

 

そんなある日、普段から無口であまり話したこと

のないF君に何気なく、いつものように愚痴り

ながら例の質問をしてみました。その時のF君から

言われた言葉(声のトーンや表情含め)程、

若かりし調子に乗ったバスケットマンに響いた

言葉はなかったように思います。

 

そのF君に言われた言葉とは、ただ一つ

「練習」😑でした。←ほんとこんな顔で

 

その言葉を聞いた時、ドキッ😳としました。

本質を、痛いところを、核心をつかれたように

感じました。

 

裏技なんかない。コツコツと、黙々と、地道に

やるべきことを日々やっていく。その上に成長、

成功がある。そんな当たり前のことに気づけて

いなかった。いや、気づいていても、安易な

近道を探していたのかもしれません。その日から

少しずつではありますが、日々の私の練習に

取り組む姿勢は変わっていきました。そして、

その3年間努力を出来たという自信は、後の

医学部再受験やマラソンなどにも

活かされていたように思います。

 

さて、前置きが非常に長くなりましたが、

私が何を言いたかったかというと。

 

人の「気分」も似たようなところがあるな、と

感じています。

 

気分を改善させる裏技なんてものはほとんどなく、

規則正しい生活、適度な運動、適度な休息、

アルコールを飲み過ぎない、etc. などの日々の

地道な「当たり前」の積み重ねの上に「気分の安定」

はあるのだと思います。

 

実際患者さんも気分を変えるために、考え方を

変えるために、何か「いい方法」や「コツ」は

ないか、と心療内科を受診されるケースも

多いかと思います。

 

ただ、多くのケースでそのような「コツ」はなく、

生活の状況を確認し、ネットでも得られるような

当たり前の日々の助言や、休息、時には服薬を

勧められることがほとんどだと思います。

 

でもその「当たり前」の積み重ねが何よりも

大切で、その積み重ねの上に気分の改善、そして

「良い気分」の上に「前向きな思考」

と良い循環が続いていくのだろうな…と

年末年始にこんなことを考えていました。

 

あけましておめでとうございます🎍

今年もよろしくお願いします🤲

 

注:その「当たり前」をすること自体が

既に苦痛である場合は無理をせず適切な

「治療」を受けてください。

 

2022年01月04日