初めての方へ

いつも沢山のお問い合わせをいただきありがとうございます。開院して一年が経ち、多くの方々の治療に関われている事を大変嬉しく思います。あらためて、当院の治療への考え方についてお伝えできればと思います。
新規にご予約を検討いただいている方々は是非下記をご覧いただき、当院の考え方についてご納得いただいた上でご連絡をいただければと思います。
心療内科、精神科で扱う領域はとても広く、ちょっとした「考え方の癖」について指摘したり修正する取り組み、生活指導をして症状の原因を取り除く取り組み、お薬を一時的に使うことによる治癒、お薬を長期に使うことで「症状を最小限に抑え」疾患と付き合っていく、など様々です。それはちょうど整骨院で「歩き方の癖」を指摘したり、糖尿病内科で生活指導をしたり、内科で1週間お薬をもらい風邪や腸炎を治したり、癌の痛みを長期に抑えながらなるべくQOLを維持する、といった関わり治療、に近しいものがあると思います。
我々専門医の仕事は様々なご相談を受けた時点で、これは「考え方の癖を指摘するだけで治るものか」それとも「行動を変えることで改善すべきものか」はたまた「お薬を使うべきことか。それは短期の治癒目的か、それとも長期に付き合っていくものか」を判断することだと思います。 そして治療に対する見立てを率直に患者様にお伝えすることが大切だと考えます。 しかし、精神科医療は専門性が高い割にはネット等の普及によりどこか身近でもあり、皆様それぞれがそれぞれなりの考え方を持ちやすいのも事実です。「うつは気合の問題」「統合失調症は運動してれば治る」このような事を家族や友人に言われた、と今でも患者様から聞くことがあります。患者様ご自身が「自分は◯◯病でこの薬とこの薬を使えば治るとネットに書いてあったので処方して欲しい」と希望されることもあります。このような「個人の解釈」は他の身体科ではそこまで聞かれることはありませんし、「癌は気合の問題」と言えばそれこそとんでも医療として問題になるのではないでしょうか。
このような理由から本来お薬がいらない「一時的な軽い体調不良」に対してお薬を強く求められたり、逆にお薬が絶対に必要な症状に対して「お話をして治してください」とお願いされてしまうことがあります。
それはウィルス性の風邪に対して抗生剤を処方する過剰医療や、癌を話すことで治癒する、といった事と同等、と言えばわかりやすいでしょうか。
もちろん抗生剤が二次的な細菌性の肺炎に効果があることもありますし、話す事で癌患者様の痛みが軽減することは事実です。
しかし、クリニックへご相談に来ていただいた以上はまずは一番適切な治療への見解をお伝えすることが大切であり、それが患者様なりの「解釈」と異なり、ご希望にお応えできないこともしばしばあります。
精神科、心療内科は「医学」であり「こころ」の問題は厳密に言えば「脳」の問題、多くは「脳」の神経伝達物質の問題であることは忘れてはいけません。
精神科医1年目の頃、4,5人の患者様だけを担当し、たっぷりと時間のある中で「たくさん親身に話を聞けば治る」「こちらの思いが伝わり患者さんは必ず回復する」そのような心意気で大学病院の入院患者様の治療にあたり、感謝はしてもらえど一向に症状が良くならずに悩んだことを今でも覚えています。
一方でベテランの先生方が忙しい外来をこなす中、20人、30人の患者様の症状をみるみる改善させていくわけです。精神疾患にきちんと「医学」として関わり、本当に適切な治療をしていくことの大切さを痛感しました。
もちろん、患者様の訴えに耳を傾けること、しっかりと関わること、その思いはブログにも記してますように今でも変わることはありません。
しかし一方で、「こころの病気」「脳の病気」として疾患をとらえ、適切な「医学的治療」を実施することが保険診療をする医療者としては何よりも大切です。
受診された際は私なりの医学的見解をお伝えさせていただきます。患者様のご希望にお応えできないことももちろんあります。しかし、だからと言って私の見解を押し付けることは決していたしません。
聞いていただいた上でご納得いただければ治療を開始しますし、そうでなければその考え方を持ち帰っていただくだけでも構いません。
上記のような思いのもと日々診療にあたっております。どうぞこれからもよろしくお願いいたします。
  院長 神保 慎