like father, like son

「パパは?」

 

「走りに行ったよ〜」

 

サラリーマンの父は仕事から帰るなりすぐ、良く走りに行っていた。 何でそんな辛いことわざわざするんだろう? と子供の頃は全く理解出来なかったが、帰ってくるなり出迎える私を爽快な笑顔で抱き上げてくれたのは覚えている。

 

父はとにかくいろんなものを実際に見聞き、体験するのが好きな人だった。幼い子供3人連れて、ドイツの壁崩壊直後の東ヨーロッパ(東ドイツ、チェコスロバキア、ポーランド等)やカリブのドミニカ共和国まで旅行した(幼すぎてあまり覚えていないのが残念だが)。ポーランドで興味本位で入った北朝鮮料理店でさらわれそうになったのは今では家族の笑い話である。 そんな旅行各地でも必ず父は毎朝ランニングに出掛けていた。「実際に走って見て回った方が現地の様子が良くわかる」ということらしい。

 

思い出せる限り、父に厳しく「怒られた」という記憶はない。もちろん、間違っていることを「諭された」ことは何度もある。反抗期で心を閉ざしていたり、何か苛立っているのを察すると必ず「慎、走りに行くぞ」もしくは「テニスに行こう(父はテニス好き)」と声をかけられた。いやいや、ふてくされながらとりあえずは着いていき、ひとしきり運動すると確かに心が少し晴れたような気がした。でもそれを素直に父に伝えることは出来なかったが。そんな時も必ず父は「どうだ、運動すると気持ちいいだろう!」と会社帰りのランニング後と同じ笑顔で話しかけてくれた。

 

そんな父が最近、不眠や食欲不振で悩んでるらしい。好きなテニスも最近は不調だそうな。

 

久しぶりに会って話を聞いて、専門家として、息子として助けになれたらと思う。

2021年11月12日