むかーし、むかし、あるところに、重病を患った王様がおりました。
どんな薬も効果がなく、街中のお医者さんがあらゆる手を尽くしても症状は快方に向かうことはありませんでした。
そんなある日、世界一の名医が街に来ているという噂を聞きつけ、家来達はその医師を城に呼び寄せ診察をさせました。
この医師に診てもらえたらどんな病も治るに違いありません!
すると王様をじっくりと診察した医師は一言「モリバンダス」(ラテン語で「死にかけている」)とつぶやきました。
その言葉を聞いたラテン語を話さない王様は大喜び! 体調もみるみるうちに回復し、その後も数十年に渡りその地を治めたそうな。
きちんとした経験を積み、日々研鑽を怠らなければ一定の医療水準は維持できると思います。
しかしそれだけなく、こころの医療に携わってきて特に重要であり、魅力でもあると感じるのは、医療者側の人間の人柄や患者さんとの相性の大切さです。
懸命に患者さんの話に耳を傾け、自分のことのように考え、悩み、解決策を共に導きだしていくことの大切さ。
「この先生に診てもらえてるんだからきっと良くなる」と思ってもらえること。
それだけで、治療結果が全く異なってくることは良くあることです。
「苦しい時は先生の言葉を思い出すようにしています」 治療者としてこのうえなく嬉しい言葉の一つです。
むかし話の名医とまではいかなくとも、来院された皆様には少しでも良い影響を与えられるように努めています。
じんぼこころのクリニック 院長 神保 慎