ランニングとこころ

欲にとらわれず、何事にも執着せず、一点の曇りもない状態。それが「無」の状態だと思います。

ランニングをしていると走りはじめは気になる仕事の事や、煩わしい人間関係の事など、ごちゃごちゃとした事が頭の大半を占めています。

しかし、5分、10分と時間が経つにつれ、いつの間にかそれらはどこかへと消え、風の音、鳥や虫の鳴き声、自分の走る足音や呼吸音などに意識が研ぎ澄まされていくことを実感します。

そしてまた走り終わると日常の悩みが押し寄せてくる。。

スポーツとこころの健康について、様々な神経伝達物質との関連を示唆した研究も最近増えてきています。

確かに興味深いことですし、今後も新たな発見が出てくることでしょう。

しかし、それ以上に、、、わずか数分~数十分の時間かもしれませんが、このように日常の中で少しでも「無」になれる時間があること。一瞬でも悩みを忘れられること。それがこころの健康にとってとてつもなく大切なのだと思います。多くの悩める現代人がランニングに今はまっている一つの要因なのかもしれません。

 

脳は何かを考えるだけでも大量のエネルギーを使用すると言われています。フルマラソンに出場された経験がある方はわかるかもしれませんが、好記録が出た時ほど何も考えずに「無」になって42.195kmを駆け抜けたのではないでしょうか。「どこどこが痛い」「あまり練習できてなかった」「キロ何分で走らなきゃ記録達成はできない、あぁもうダメだ。。」とごちゃごちゃ考えてしまっている時は走るために必要なエネルギーを脳が消費してしまっているのかもしれませんね。

 

「無」になること。その手段は、ある人にとっては音楽であったり、読書であったり、映画鑑賞であるのかもしれません。ただ、シューズさえあれば旅行や出張でも日本中、世界中どこででも「無」になることができるランニングは最高のこころの癒やし、やすらぎなのではないでしょうか。私も少しずつ再開しています。

 

                     じんぼこころのクリニック  院長    神保 慎

 

 

2019年04月08日